代号12


 実は今まで全く語られてこなかったが、福井にはこういう作品(?)もある。
 その名も――

「代号12」!!!!

 これは一体何なのか? 賢明な方にはもうお分かりだろう、実はこれ、中国語版「Twelve Y.O.」の事なのである。中国で日本ミステリの流行でもあるのだろうか? その辺りのことはさっぱりわからないが、とにかく「中国語版・12」が存在するのだ。(以下、「Twelve Y.O.」の内容に触れることが書かれているので未読の方はご覧にならないよう注意していただきたい)



 これがその「代号12」の表紙である。ちなみにサイズは日本の文庫サイズと変わらない。紙質は表紙は同じだが、本文用紙は若干ざらついている感じである。

 どうでもいいと言えばどうでもいいのだが、帯に、

「評委大沢在昌説:“我喜●福井晴敏的作品、他的〜」
(●はへんに又、右に欠という字)

とか書かれているが、大沢在昌と書いて13億人の中華人民共和国民の何割がわかるのだろう? 中国で日本ミステリとはそんなにメジャーものなのか?



 帯を外すとこんな感じである。

 …ところで、この表紙の絵は一体誰なんだろうか?

 なんか「アメリカ産ピーナッツ缶側面に描いてありそうな絵」なんだが、それはつまり、

 これが12でございますか!?

 大体、服の趣味が悪すぎなのは、この際目をつぶるにしても、このカリフラワーのごとき髪型はいかがなものか? それよりなにより、このヒゲの濃さはなんなんだろうか? これでは、失敗した平●堅である。



 裏表紙はこんな感じ。しつこく「失敗した●井堅」の絵がデザインされていて、別に頼んでもいないが「12=男前」という既成概念を打ち破ってくれる。
 どうやら日本版と同じ内容の「あらすじ」が記載されているようだが、「アポトーシスU」が「細胞自然死亡U」とかいう、「そのまんまやんけ!!」という、実に突っ込み甲斐のある表記がなされているのには唸るしかない。ちなみに「ウルマ」は、中国語が正確にパソコンで呼び出せないのでなんだが、「烏魯瑪」という表記になるらしい。「珊瑚」などという意味は微塵も感じさせない。実に潔い。
 右隅の記載によれば価格は10.80元だそうで、これは日本円に換算すると134円くらい。
 また、帯の裏には「池井戸潤 无底深淵」などと書かれている。これはあれですか、「果つる底なき」のことですか?



 中身。かなり頑張れば読めないこともない。多分、文庫版の190ページ辺りだと思うのだが…。

 上部についているなんだかよくわからんシンボルマークがそれなりにカッチョ良いのだが、印刷の具合があまり宜しくなくて正直言って読解不能。意味がない。
 ところで、この「代号12」、異国の方々をお客にしている以上、色々と説明しなければならぬ事柄(日本の歴史であるとか、自衛隊というものについてだとか)がある訳で、前書きの後に訳者の注釈のようなものが挟まっているのだが、これがどうも途中から注釈ではなくなって、あらすじになっているようなのだ。

 “生后之門”、毒気体迅速蔓延…

 ってあなた、それ最後のクライマックスまで書いてあるじゃないですか!?

 これがあとがきならまだわからんでもない。だが、いきなりである。序文も始まらぬうちから、最後までを要約したものを載っけてどうするというのか。それとも何か、国民性として予定調和が必要なのか?



 ところで「Twelve Y.O.」というのは乱歩賞受賞作である。乱歩賞受賞作は出版される際、なぜか著者のアイドルまがいのピンナップがついてくるのだが、この「代号12」にもそれがついている。ついているのだが、

 なぜか左右反転されている。

 とてもわかりにくいと思うが、時計が右腕にされているのである。ついでにボタンホールも逆である。
 中国語というのは、日本語とは違い左から右に読んでいくので、漫画やグラビア雑誌は左右を反転させて文字を中国語に差し替える訳だが、なにゆえ著者の写真を反転せねばならないのか?

 我々には見えない書き文字でもあるのであろうか?

 それともなにか、この写真は存在そのものが1コマ漫画なのだろうか。



 …というわけで、とても愉快な「代号12」、中国にご旅行の際にはぜひお土産に加えてやってください。5000部しか刷ってないらしいので一般的な書店にはないかもしれないが。