「Op.ローズダスト」 とは…
 「亡国のイージス」、「終戦のローレライ」などの著者である福井晴敏の初めての連載小説でした。

 2003年5月〜2004年12月まで、文藝春秋の週刊文春で毎号6ページずつ掲載されていました。(週刊誌連載ということで北村公司氏の挿絵も各回2枚ずつ掲載)

 今回、未完のまま終了した連載分に、全体の1/3にあたる原稿用紙800枚分 のクライマックスシーンを追加! ついに誰も見たことがない真のエンディングを迎えます。


 舞台は現代――混迷の中にある日本。

 その首都であり、世界一安全な街と言われてきた街「東京」に、突如として響き渡る爆音と悲鳴。
 北朝鮮からやってきたといわれる5人のテロリスト「ローズダスト」。
 ある目的を秘めて、彼らは都内各地でテロを敢行。日本中に恐怖を撒き散らしていく。
 そしてローズダストを捕捉するべく、密かに活動を開始する日本の地下組織に所属する者たち。

 ある者は復讐のために、ある者は贖罪のために、ある者は家族を守るために繰り広げられる壮絶な戦い。それは、遠い外国の戦場のような光景と言ってもよいでしょう。

 しかし、今の日本には、これをフィクションの一言で片付けられない「状況」があるように思います。

 たとえば、本作が連載開始される直前の2003年3月には米英がイラクに空爆を開始。連載中に自衛隊のイラク派兵が決定しました。そのイラクでは外務省職員が凶弾に倒れ、その後もジャーナリストが銃殺される事件が発生。NPOのボランティアスタッフや一般の青年が誘拐され、「自己責任」という言葉が声高に叫ばれるようにもなりました。

 日本と近隣諸国間の外交問題に目を向ければ、北朝鮮の拉致問題をはじめ、同じく北朝鮮核問題についての6か国協議、万景峰号の入港拒否、更には中国での大規模反日デモなど、日本という国の立ち居地を改めて考えさせる事件が次々に起こりました。
 そして竹島(独島)問題が激化する一方、それと並行するように勃興した「韓流ブーム」。ここからも 「国家」と「個人」の思惑・主義・価値観が大きく乖離していくようすが見て取れます。

 日本国内では少年犯罪の凶悪化が問題になり、幼い子供が犠牲になる事件も多発しました。巧妙な振り込め詐欺もますます増加。モラルハザードという言葉が一般化し、安全神話は完全に終焉したかのように思えます。

 政治や国際情勢の話だけではありません。鳥インフルエンザの蔓延、アメリカ産牛肉BSE問題などによって、「もはや災厄の前に国境など意味を持たない」ということに、遅ればせながら気がつかされた、そんな気もします。

 加熱するマスコミ報道がこれらの状況を過剰に煽り立てた結果、もはや危機を危機とも感じなくなったある種の麻痺が、日本を閉塞の闇に追いやっているようにも見えます。体感のない言葉だけがひとり歩きをして、気がつけば自分たちの咽元を締め上げている――それは「古い言葉」とでも呼ぶべき何かなのかもしれません。


 本作「Op.ローズダスト」は、そんな「古い言葉」の呪縛に抵抗し、「新しい言葉」を手に入れようとする者たちの物語でもあります。「古い言葉」の呪縛を断ち切り、真の希望をもたらす「新しい言葉」はみつかるのでしょうか? 答えは、怒涛の展開を迎えるクライマックスの果てにあります。
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